3月20日(土)
場所:ワシントン
天候:曇り

今日の出来事

アクティビティ
07:15 宿舎ロビー集合
08:00 バスでホテル発
Arlington Science Focus Elementary School見学
朝食
ワークショップ
昼食
ワークショップ終了
16:30 バスで学校発
17:00 ホテル着
夕食:各自で


アーリントン科学小学校前で。
この学校は公立のため、授業料などは無料である。児童数が減少する学校が多い中、入りたい児童の「待機リスト」があるという。

(左から)伊藤教頭、江草、シンディ先生、堀
昆虫学者ナオミ・ピアス博士のお話。

子供の頃は虫が嫌いで、それを克服しようという気持ちがあって昆虫学の世界に足を踏み入れたという。

「教育によってすぐに好きになるかは分からないが、数年後に好きになることもある」というお言葉は自分の授業を考えていく上で示唆に富んでいた。

ワークショップ1

全米理科教育学会・前会長ドワイト先生
動物園などから寄贈を受けた大きな蛇などを学校で飼っていたという。

(続き)
実際に集音マイク(写真)や暗視スコープを試すことができた。「ハンズオン」と呼ばれるこういったワークショップは得難い体験ができる点で有意義である。
ワークショップ2

土壌の専門家マキシン・レヴィンさんによる講義(土壌について。そしてそれをどう生徒に教えるか)。

ここでも実際に各種の土にさわってみて、粘りけを実感するというハンズオンがあった。
ワークショップ3

ウィリアムズ博士

ファーストプランツという発育が非常に速い植物を用いた実験のイロハを学ぶ。

この植物はたとえば遺伝の実験に用いた場合、結果が早く分かるのでとても有意義である。、
明日は朝早く移動なので、ホテルのレストランで夕食をとった。

富士宮市立富士根南小学校の長島先生とHolly Spring Elementary SchoolのPamera.Jones先生も同席され、とても楽しい時間を過ごすことができた。


本日の研修

■3月20日(土)−研修第5日目

今日は実際の学校を訪問する。訪問したのは、ワシントンの郊外のアーリントンサイエンスフォーカススクールという学校である。この学校は過去にFMFのプロジェクトで使われたことがあり、名前から分かるように理数系教育に力を入れている。バージニア州の学校ではあるが、ワシントンからバスで30分もかからないところに位置している。

【あいさつ】

学校に到着すると、集会場みたいな場所に通される。天井からは各州の州旗が下げられている。シンディの話では、集会場ではなくカフェテリアとのこと。学校内はいたるところに生徒の作品が掲示されている。

朝食をとりながら、学校側を代表して、理科教諭のキング博士より学校の特色について話があった。

この学校は幼稚園から5年までの生徒が在籍しており、全校生徒は約450人。35人の先生と15人のスタッフがいる。生徒は45%が白人系、37%がアジア系、28%がアフリカ系であるという。この学校は15年前、保護者からの強い要望で設立された。

@     世界的水準と比べて理数系が劣っている。

A     色々な種類の学校から学校を選択できるようにして欲しい

そこで、この学区の3つの学校がチームを作って、理数系を強化するためのサイエンスプランを作った。

@       公立学校なので入学金・学費はない。

A       アーリントン学区内の生徒であれば、誰でも入ることができる。

B       他の学区では生徒数が減少している学校が多いが、この学校は生徒数が増加し、待機者名簿に掲載されている生徒も多い。

C       サイエンス・テクノロジーを重視する学校であるが、芸術系や体育のプログラムも重視し、身体の五感を全て使って学ぶようにプログラムが作られている。

【本日の講師の紹介とワークショップの説明】

 本日の講師が紹介された。参加者は下記の通り

@       ポール・ウィリアムス(ウィンスコンシン大学名誉教授)

A       ナオミ・ピアス(ハーバード大学教授 昆虫学)

B       ジェリー・バーグ博士(米農務省)

C マキシネ・レビンス(米農務省)

【学校内見学】

  3つのワークショップに分かれるため、会場を移動する。その途中で学校の中を見学する。下記のような点に気がついた。

@     廊下や教室のいたるところに生徒の作品が飾られている。書道の作品もあった。動植物の観察や理科に関係するものが多いようだ。

A     それぞれの科目ごとに教室が作られていて、そこに行って学ぶシステム。ニュージーランドなどで見たのとほぼ同じである。

B     学校の色々な部分で、赤青の明るい原色が使われている。

C     図書館は本の数はさほど多くはないが、歴史などの人文系統に比べ、理科関係の本が目に付いたが、一般的な本も多いようである。図書館の中にも数多くのコンピューターが設置されていた。

【ワークショップ1】

1.ジョーンズ博士による講演

最初のワークショップは、ジョーンズ博士による講演が行われた。以下はその要旨。

博士の専門はもともとは心理学であり、ねずみの生態を研究していた。博士は人間が自分の感覚で動物の世界を見てしまうことの恐ろしさを自らの体験を踏まえて語った。

質疑の途中でナオミ・ピアス教授も参加された。

 2.ミシガン州ノースビル市ヒルサイド中学校理科教諭のドワイト先生(元全米理科教員組合の会長)のお話

   続いて、ドワイト先生のお話があった。ドワイト先生は昆虫に加えカエルの研究で著名な方であり、MTPのOBでもある。以下にその要旨を記す。

日本の自動車会社のトヨタの奨学金を受け、昨年にはそれまで難しいとされてきた熱帯産のピパピパというカエルの繁殖に成功した。奨学金によって学校内に熱帯雨林の環境を再現したかえるの飼育園を作り、生徒とともに管理している。また、学校には人間がペットとして飼ったものの捨てられてしまった多くの動物も飼育されている。アナコンダというへび・ワニ・オウムなどの飼育の難しいエキゾチックペットであり、専門の学校獣医と提携している。

 かえるの研究については、できるだけ事前の知識は与えないで生徒たちの調査にまかせた。夜間の調査は保護者の協力も得ながら、朝・昼・夜の3回1年間通して調査をしたそうである。こうした調査の手法は、石川県の小松市の学校との共同研究でも生かされ、小松でウシガエルを発見し、アメリカのものより大きいと驚いた。

しかし、ウシガエルは日本中どこにでもいるとの報告が和歌山の高校の先生から出され、ドワイト先生は驚いていた。

   

3.フィールド調査の方法について

 フィールド調査の方法についての説明が、中庭でFMFのオービンさんからあった。この方法は、トランセクト法といって一定の長さの線を引いて、その線上の周りの生物の個体を採取する方法だそうで、そのやりかたが説明された。江草先生は専門家らしく、そのやり方を十分にご存知であり、この講義ののちに配布されたテキストの日本語訳が誤訳であることを通訳の方に指摘し、さすがだと思った。また、かえるの声を聞くための装置を堀先生が実際に使ってみたり、夜間でも見える暗視装置などにも触れてみることができ、椅子に座っての講義が多い中で、有意義なプログラムであった。

【ワークショップ2】

1.「Soil,BUGS,Life,Death and Renewal」

by Dr.Jeri L. Berc, Department of Agricultere

 ワークショップ2は、理科室に場所を移して、ジェリー・バーク博士(米農務省)による土壌についての講義受けた。博士は農務省が進める「Helping People Understanding Soils」のプロジェクトの中心人物である。博士は用意してきた原稿を読み上げながら、次のように述べた。以下にその要旨をしるす。

[土壌生成の必要性]

土壌が水で浸食されたり、風で吹き飛ばされたりし、土壌の枯渇という減少がおきている。これまでの様々な文明が土壌の枯渇により滅びてきた。土壌中の有機物を資源として利用し、再生させていくことがて生態系の維持に必要であり、その鍵となるのが昆虫の存在であり、昆虫は土壌中の様々なものを食べ、それを土壌へと代えていく。こうした昆虫の散在により土壌中の有機物は増え、土壌の枯渇を防ぐことができる。

[土壌における昆虫の役割]

 土壌の中に生息する昆虫とそのえさとなるものは重要である。なぜなら彼らは地下の物質の変形者である。彼らが微生物有機物を消化し土壌へと変えている。腐葉土などはその良い例である。有機物を多く含んだ土壌は植物などの栄養分をとなり、水分の枯渇を防ぎ、植物の成長に使われる。

 [土壌枯渇の原因と対策]

土壌の枯渇の原因や水質汚染の原因は農業などの人間の活動にある。人々は市販のミネラル分が含まれた肥料を用いることでやせた土壌の有機物を補うことができるが、そのような化学物質は雨で洗い流され、表面や地下水を汚染するだけである。

こうした土壌の枯渇や水質汚染は農業の結果だけであるとはいえない。農業のやり方によっては土壌再生に貢献できる。その鍵となるのは土壌中の有機物の再生である。

 先生方が生徒に教えて欲しいのは、土壌とコンポストについてである。コンポストは土壌を再生し、有機物をリサイクルする鍵となる行動である。

2.「Helping People Understanding Soils-Soil-A Hands on tool to teach about the envioromental for all ages」  

Maxine Levin,Soil Scientest Department of Agricultere

次に、農務省の科学者であるMaxine Levinさんが具体的に土壌についてどのように生徒に教えていくのかという観点から講演を行った。今日は皆さんの手を汚してもらいますといって始まった講演は、途中で実際に採取してきた土を触りながら、より具体的に土壌についての理解を深めるものであった。

(1) エコシステムの基礎としての土壌

生態系の中で土壌というもの土を表す四文字の単語ではない。土壌は無視されやすいがそれを生徒に教えることで生徒の環境に対する興味を引き出すことができる。土壌形成のファクターとしてはつぎのようなものがあげられる。

@     母体となる岩の組成 A気候 B土壌中の生物 C地形(特に傾斜) D時間 E人間の関与。

日本の中学校の地理ではアメリカの問題として、過剰生産による土壌侵食を教えているが、1cmの表土を作るのに100年から400年がかかるといい、その表土が1年に5cmも失われている場所がある。場合によっては流失し侵食された表土の回復に場合によっては2000年もかかる

 (2)土壌識別の観点

  実際に土壌の性格のと違いを見極めるためには、下記のような点が大切である。

@色 Aはだざわり B構造 C石の量 D植物の根 E穴 

(3)土壌の役割

  土壌の果たす役割として下記のようなことが考えられる。

   @ 植物や動物の生態の保持 

A  水の分割や溶かされた化学物質の調節 

B  汚染源や化学物質の無毒化と固定化、減成、緩和など

C  栄養源の貯蔵と再利用

D  構造物への影響

E 微生物へのサポート

(1)  土壌についての実習について

生徒に土壌について教える時には、下記のような観点から教えることができる。また、土壌の質を測るための「Soli Kit」については簡単なもので誰でも買うことができる。生徒はそれをつかって、 ph.有機物・炭素・ミネラルの度合いを測ることができる。

 @ その構造について

  土壌は3つの大きさの土からなる。粘土・シルト・砂である。粘土を10セント硬貨と考えたとき、砂はビーチボールほどの大きさとなる。こうした粒子の大きさの違いが水の流れへなどにどのように影響するかを考える。

 A その色について

  土が黒ければ有機物を多く含み、赤ければ鉄分をよく含む。青とかグレーの色は空気などの酸化を受けにくいなど色による土壌の性格の違いを考える。

 B 土は生きている

  土壌における微生物や昆虫などの果たす役割を学ぶ。ペットボトルのようなプラスチックのようなものに土を入れ、光をあててどのような生物が出てくるかを調べてみる。

 (5) 結論

    土は生きている。土壌をよく理解することが生態系の維持、人間の生活の維持につながる。このほかの土壌についての学習方法は、インターネットから手にいれることができる。また、CD−ROMでも公開している。

 

 講演の終了後、「土は生きている」で紹介された実験方法は、江草先生が日本で行っている方法と同じものであった。江草先生はその様子をデジカメで撮ってきていたので、堀先生のコンピューターで、Levin さんに見せた。Levin さんも大変喜んでいてくれた。

科学というものを学ぶにあたっては、洋の東西を問わない普遍的なやり方ということを強く感じた。

【ワークショップ3】

Investing the Chemical Emviroment」

                                                 by Dr.williams

 ワークショップは、ウィスコンシン大学名誉教授のウィリアム博士によるものであった。

高校の教員には、朝に小さなプラスチックの入れ物が渡され、それに何か水に溶ける物質を集めて溶かしてくるように言われていた。何に使うのか良く分からなかったが、堀先生はコーヒー、江草先生は植物の葉をすりつぶした物、私はのど飴を溶かしたものをもってワークショップに参加した。

 ウィリアム博士は、このFMFのMTPに長らく協力されてきた方で、気仙沼市の面瀬小学校の研究にも深く関わってこられた方であり、ファストプラントプロジェクトの創案者でもある。博士は日本人にも大変分かりやすいゆっくりとした英語で、また、一方的に教え込むのではなく、参加者を指名しながらその意見をまとめていく形でワークショップを進行された。日本の授業では、どうしても教員が先に結論を言ってしまいがちであるが、

@     植物の成長が他の物質によってどのような影響を受けるのか

A     どのような植物がどのように生長するのか

B     遺伝学習にファストプラントを応用する

という3点からお話がなされた。

日米で共同研究をする際に気をつけること。

@     比較する際の条件を統一すること

何時観察するか。何時記録するか何を観察するか。

【実験】

 朝各自が用意した液体を水で薄めていく。それにファストプラントの種子をいれて、その後の発芽の状況を比較して考える。

 単に作業を行うだけではなくて、最終的に作られた液体が現液からどれくらい薄まったものかを考えさせていた。あるグループはパーセントで、あるグループは小数点で、またあるグループは分数で色々な表記方法があった。そして、なぜそのような表記方法にしたのかを問う作業を繰り返していた。教授の授業から、@生徒たちに作業のひとつひとつの意味を考えさせること、A事前に知識を与えるのではなく、生徒たちが作業のプロセスでその意味を発見することの大切さを学んだ。

 教授は他にも実験を用意していたようだが、時間の関係でできなかったのは残念であったが、大変多くのことを学んだワークショップであった。

【まとめ】

 このワークショップの終了をもって、ワシントンでの日程は終わった。最後にジョーンズ博士夫妻の司会で、このプロジェクトに関わった多くの人が紹介された。これだけの人数を動かし、多くの関係者を招待して講演等を行っていくには、大きな情熱がなければならないだろう。ジョーンズ博士ならびにジョーンズ享子さんのエネルギーと、それを支えた数多くのスタッフの方の献身的な努力に頭が下がる思いであり、またそれに応じるだけの努力が我々に課せられているという強い使命感を感じた。

 実際に自ら体験するワークショップという形式は、とても有意義であった。また、今日のワークショップでの活動で感じたことを下記に記す。

@ 「play」 and 「enjoy」

講演された方々が「play」「enjoy」という言葉を多用していた。まず実際にやってみて、そこから自分で発見していくという手法が重視されている。日本はどうしても知識を教え込むことを重視しがちであるが、生徒の興味関心を引き、それを伸ばしていくことに力が注がれている。

A 「textbook for everyone」

教材の多くが、ウェブサイトにのせて共有化されていることに深い感銘を受けた。インターネットの発達の中で、アメリカではそれぞれの教育研究の成果、考えたことを自ら創りあげた教材を公開して、他の人の意見をうけながら改良してより良いものにしていく。また、そうした成果を簡単に手に入れることができる土壌が整っている。日本も見習わなくてはならない点だと思う。

【夕 食】

エチオピア料理、日本料理と続いて、今日は中華料理にしたいとの声もあったが、先生方が疲れてきていること、明日の出発が早いこともあって、ホテルのレストランで夕食をとることにした。本校は中高一貫校なので、中学校と高校のチームでワシントン最後の食事をした。たまたまレストランにお見えになった富士宮市立富士根南小学校の長島先生とHolly Spring Elementary SchoolのPamera.Jones 先生も同席していただいた。日本語の歌や英語の歌も飛び出して、なかなか楽しいひと時を過ごした。日本側もアメリカ側もワシントンでのスケジュールが終わって、ほっとした感じである。


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